尊厳について:

「自由」よりも「尊厳」の方がはるかに願望されるところの多い概念である。この概念は[……]自己表出の成功を示すものである(ニクラス·ルーマン『制度としての基本権』 isbn:9784833221436 p.99)。

人間の自由と尊厳とが交互に条件づけあっている[。][……]問題となるのは、[……]コミュニケーション過程において個人的人格性として自己表出するための外的および内的な予備条件である。自由は、それがもし不整合な自己表出や、人間としてどこにおいても通用しないようなものにしか導かないとすれば、いかなる意味ももたないであろう。そして尊厳は、いかなる自由な行為も行為のアスペクトも存在しないのなら、表出のためのいかなる素材も見出すことはないであろう(『制度としての基本権』 p.102)。

尊厳の問題は、整合的で確信をもった自己表出の困難性という点にあり、またこのような課題に対する人間の自己責任という点にある。人間に帰属させることが可能な表出について、人間は自ら決断を下しうるのでなければならない。人間だけが人間とは何であるのかを規定しうるからである。この点においてこそ憲法は人間を国家から保護するのである(『制度としての基本権』 p.107)。